近年、半導体テクノロジーの重要性が再認識されてきたが、半導体テクノロジーのベースとして、素材としての半導体結晶作成技術は欠くことのできない基幹技術である。しかし実際の半導体結晶成長では結晶粒の境界で並進対称性(六面体の姿勢を変えない平行移動だけで近隣の六面体と重ねられるか)が維持できずに結晶欠陥が発生する、或いは結晶欠陥の発生が原因で並進対称性が崩れるなどの現象が起こり、それらの半導体結晶をもとにして作製される半導体デバイスの理想的特性がしばしば損なわれている。
本連載記事では、ゲルマニウム(Ge)やシリコン(Si) に始まりIII-V族化合物半導体を経てワイドギャップ半導体に至った半導体材料間の共通性や相違点を、特に結晶の対称性(平行移動や回転操作で結晶全体が重なるかどうか)、並びにエピタキシャル成長を軸とした結晶成長に伴う結晶欠陥発生の観点から独自の視点も含めて比較してみたい。
まず連載第1回として半導体材料のエピタキシャル成長時の問題意識を結晶対称性の観点から紹介する。