〜 イノベイティブな半導体、エレクトロニクス、エネルギー技術のソルーション 〜

Innovative Semiconductors, Electronics, & Energy Solutions

タグ一覧

コラム 解説

SiCのフランク型積層欠陥 (9)
〜 実験結果との比較とまとめ 〜

結晶構造が似ている六方晶の2H-GaNでは、ショックレー変位を伴うフランク型積層欠陥は、それなりに報告されています。2H-GaNのフランク型積層欠陥についての考察を次にまとめます。図9-2に2H-GaNのフランク型積層欠陥の構造と、実験によるPLスペクトルのメインピークの位置を示します。

図9-2 2H-GaNのフランク型積層欠陥の構造と、実験によるPLスペクトルのメインピークの位置.  

*** Lahnemann et al., J. Phys. D: Appl. Phys. 47 423001 (2014).

ショックレー変位なしの欠損したフランク型積層欠陥は構造上作りずらい事が分かりました。この積層欠陥は稀な積層欠陥ではないかということが推察されました。このことが、2H-GaNではフランク型積層欠陥の変位ベクトルがショックレー型変位付きのもの、R=c/2[0001]+a/3<1100>が考察される理由かもしれません。

一方、ショックレー変位なしの場合のフランク型積層欠陥はZhadanovのノーテーションで記述すると、欠損型と余剰型は同じものになり区別がつきません。積層欠陥部分のみのHRTEM像やHAADF-STEM像を撮影してもこれらの区別はつきません。PLスペクトルでも、欠損型、余剰型の区別がつきません。この理由は、四面体2層で1単位胞を構成している構造で、1層欠損していることと、1層余剰に挿入されている状態は区別がつかないからです。フランク型積層欠陥の縁に存在するフランク型部分転位のコア構造を撮影して、四面体層が1枚増えたのか減ったのかを調べると両者の区別はつくはずです。また逆に、ショックレー変位なしとショックレー変位つきのフランク型積層欠陥の区別は簡単につく事はわかりました。

2H-GaNの基底面の積層欠陥は、I1,  I2,  Eの3種類に分類されています。I1タイプとはショックレー変位付き欠損したフランク型積層欠陥と定義されています。I2, タイプは通常のショックレー型積層欠陥、Eタイプはショックレー変位無しの余剰なフランク型積層欠陥と定義されています。実際の論文などの報告例だとフランク型積層欠陥に関してEは少なくI1タイプの報告例が多いようです。I1タイプのIはIntrinsicの略で、欠損したランク型積層欠陥と一応は定義されていますが、余剰なフランク型積層欠陥も積層欠陥まわりの積層構造は、欠損型と同じ構造です。このことにより、2H-GaNの場合、研究者は、欠損型、余剰型の区別には頓着せず、…,1,1,2,1,1…の積層構造をI1タイプに分類していると思われます。実際には、フランク型部分転位の断面像をSTEMで観察すると、これらの区別はつくはずです。

これで、4H-SiCと2H-GaNのフランク型積層欠陥の構造についての考察は終わりです。このような考察と整理によりフランク型積層欠陥について注意が払われ、この欠陥が抑制される技術が開発されることを期待します。また、このような考察が現象論的分類の精度の向上に貢献することを期待します。ご精読ありがとうございます。この解説文は以下の文献を参考にしました。

M. Benamara et al., Appl. Phys. Lett., 86 021905 (2005).

H. Tsuchida, et al., J. Crystal growth 310, 757 (2008).

H. Tsuchida, et al., Phys. Status Solidi B246 ,1553–1568 (2009).

I. Kamata et al., App. Phys. Lett. 97, 172107 (2010).

J. Lahnemann et al., J. Phys. D: Appl. Phys.47 423001 (2014).

E. Tochigi et al., Philos Mag. 97 657-670 (2017).

(完)

ページ : 1 2

カテゴリー:

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


PAGE TOP