図6-2で示された積層の構造を図6-3, 図6-4にその模式図を示します。
図6-2の積層構造を作る操作を振り返ってみます。完全結晶の…2,2,2,2,2,2…に余剰の四面体層を1枚挿入します。この挿入層は上または下の四面体層と同じ向きを向いています。そうすると、…2,2, 3, 2,2,2…になります。この時、挿入層の片側は整合していません。整合していない下または上の四面体層にショックレー変位を与えて積層を整合させると、…2,2,4,1,2,2…または、…2,2,1,4,2,2…の積層構造が出現します。一方、完全結晶の…2,2,2,2,2,2…に余剰の四面体層を1枚挿入するときに、…2,2,1,1,1,2,2,…の挿入の仕方も考えられます。この時、,…1,1,1,…の最初の1か最後の1にショックレー変位を与えると、結局、…2,2,4,1,2,2…または、…2,2,1,4,2,2…の積層構造が出現します。煩雑で冗長な説明をしましたが、簡単な結論に収束したと善意に解釈して下さい。ショックレー変位のない余剰なフランク型積層欠陥の構造はTsuchidaさんたちがTEMで観察していて、…2,2,4,1,2,2…の構造を観察しています。(Tsuchida et al., Phys. Status Solidi, B246 1552 (2009)のFig 9(c))
SiCはc軸方向に沿って非対称な構造なので、同じショックレー変位を伴わないフランク型積層欠陥であっても、2,2,4,1,2,2…と…2,2,1,4,2,2…の構造とでは、PLスペクトルでは多少の違いがあってもおかしくはないと思われます。
連載の次の回ではショックレー型の変位を伴う余剰フランク型積層欠陥の構造について考察します。
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