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コラム 解説

SiCのフランク型積層欠陥 (4)
〜 ショックレー変位を伴う欠損したフランク型積層欠陥1 〜

はじめに

この連載記事は、半導体中の格子欠陥の解析評価に興味を持つ人を対象にして解説を書いています。前回では、4H-SiCの欠損したフランク型積層欠陥とその縁に位置するフランク型部分転位の構造を考察しました。欠損した層の直上か直下の層のみにショックレー変位を与えて繋げるとR=1/4[0001]の変位ベクトルを持つフランク型積層欠陥を作ることができました。このやり方で作ると、積層欠陥やフランクの部分転位の変位ベクトルには最終的にショックレー変位成分はありません。この積層欠陥はこの連載では便宜上“純粋なフランク型積層欠陥”と呼ぶことにします。

4H-SiCのフランク型積層欠陥の変位ベクトルやフランク型部分転位のバーガース・ベクトルを調べた論文の数は少ないのですが、キャロットと呼ばれている格子欠陥に付属するフランク型積層欠陥の変位ベクトルがショックレー変位成分を持っているとの報告はあります。現在のところこのショックレー変位成分を持っているフランク型積層欠陥はどの程度の比率で存在するのかは不明です。ショックレー変位を伴ったフランク型積層欠陥の構造がどういうものかを考察するのが、この回と次の回の目的です。純粋なフランク型部分転位とはどこが異なるかを考察します。

ショックレー変位を伴う欠損したフランク型積層欠陥を作る

図 4-1ショックレー変位を伴うフランク型積層欠陥の構造を作る操作の説明図。(a)消去する層の上側の結晶全体を、下側の結晶と整合するように(x,y)平面上で変位させた後、上の結晶を下方向へ変位させ、フランク型積層欠陥を作る操作。この場合、積層欠陥の下側の結晶は固定されている。(b)同様に下側の結晶を(x,y)平面上で変位させてフランク型積層欠陥を作る操作。積層欠陥の上側の結晶は固定されている。

連載”その(3)”の図3-4で説明したフランク型積層欠陥作成モデルとは少し異なる作り方を図4-1に示します。欠損したフランク型積層欠陥を作るので、ある1層の四面体層中のSi原子層を消去します。その消去層の上側結晶と下側結晶をどう変位させて繋ぐかを考えます。図4-1(a) は、積層欠陥の下側の結晶と整合するように上側の結晶全体を(x,y)平面上で変位させた後、上の結晶を下方向へ変位させて繋がるように移動させてC原子層を1層消去しフランク型積層欠陥を作る操作の一例の説明図です。下側の結晶はガッチリと固定して上側の結晶全体を(x,y)平面で動かすので、これは下から上方向へ積層の状態を見ていく時の変位のモデルです。図4-1 (b)は、上側の結晶をガッチリと固定して下側の結晶を(x,y)平面上で変位させてフランク型積層欠陥を作る操作です。これは上から下方向へ積層の状態を見ていく時の変位のモデルです。実際の積層欠陥では上側の結晶と下側の結晶は同じ程度(x,y)平面上で変位していると思われますが、ここでは話を簡単にするために、下の結晶を固定して上の結晶を変位させたり、上の結晶を固定して下の結晶を変位させたりします。

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