積層の表記のルール
4H-SiCの積層構造を見ると、下から上方向、つまり[0001]方向に向かってABA’C’ABA’C’という周期的な四面体の積層構造をとっています。この構造を図1-1(a)に示します。図中の三角形は[1120]方向から見た四面体を示しています。それぞれの四面体の中心にSi原子が位置していて、四面体の4隅にC原子が位置しています。Aのマークのグレーの三角形は、四面体の中心のSi原子と四面体頂点のC原子がA-site に位置しています。[1120]方向から投影して見ると、B-siteはA-siteの右側、C-siteはA-siteの左側に位置しています。四面体の稜線が左を向いていて稜面が右を向いている四面体には“ ’ ”プライムをつけています。この図で左とは[1100]方向、右とは[1100]方向です。四面体の稜面が左を向いている四面体にはプライムはありません。そして各四面体は、それぞれの四隅に位置しているC原子を共有して積層構造を形成します。
図1-1(a) は[1120]方向から見た四面体の積層状態の図です。この各層の四面体がどのように配置しているかを[0001]方向から見た図を図1-2に示します。図1-2(a) (b) (c) (d)はそれぞれA-site層、B-site層、A‘-site層、C’-site層を示しています。図1-2中の赤い菱形は1 unit-cellの輪郭を示しています。それぞれh1方向h2方向に周期構造を持っています。A-siteは菱形unit-cellの角に位置しています。B-siteは菱形unit-cellの右半分の三角形の重心に位置しています。C’-siteは菱形unit-cellの左半分の三角形の重心に位置しています。図1-2(e), (f)は参考のために、B’四面体層、C四面体層の配置の状態を示します。この図1-2(e), (f)は通常の4H-SiCの構造では現れません。格子欠陥が現れると出現することがあります。
図1-1(a)を見て理解できるように、A-siteの四面体層の上にB-siteの四面体層を積み重ねることは可能です。またB-siteの四面体層の上にA’の層を積み重ねることは可能で、A’層の上にC’層を積み重ねることは可能で……と続きます。上下の積層が可能な四面体の層間の関係とは、下の四面体層の頂点のC原子と、上の四面体の底辺のカドの位置のC原子が共有され繋がる関係です。A-siteの四面体層の上にA-siteの層はのせるとはできません。また同様にA-site層の上にB’やC-site層はのせることはできません。これらの積層だと、下に位置する四面体頂点のC原子を、上に位置する四面体が、共有することができません。図1-1はこれらを分かりやすく示しています。



図1-1 (e), (f)は許される積層の場合です。下の四面体頂点のC原子と上の四面体の底面の角位置のC原子は同一のC原子です。C原子を共有し四面体のカドで繋がっています。図1-1 (b),(c),(d)では、上の層と下の層でC原子を共有していないので、このような積層は実際には起こり得ないことがわかります。A-siteの四面体層の上に積み重ねることができるのはBかC’であることがわかります。
このように上下に積み重なった2つの四面体の層の間には許される積層と許されない積層があることがわかります。任意の2層間の積層のルールを図1-3にまとめます。このルールは4H構造のSiCの格子欠陥を考える時のみではなく、6Hや3Cの結晶構造のSiCの格子欠陥を考察するときにも利用できます。図ではA /A、A‘ /A、A/A’、A’/A’などの明らかに不可な積層は示していません。A’ /AとはAの上にA’が存在している状態を示しています。図1-3の縦に表記されている二つのアルファベット文字は、上の文字は上の層、下の文字は下の層の四面体の各siteの表記です。

図1-3はフランク型積層欠陥の構造を議論する際に利用します。この積層のルールを利用して次にショックレー型変位を考えます。ショックレー型部分転位が導入された時に、発生するショックレー型変位にも許される変位と許されない変位があります。このショックレー型変位のルールを考えてみます。
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