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コラム 解説

放射光トポグラフ法の利用 (6)
〜 貫通転位の観察 〜

放射光ベルク・バレットX線トポグラフ法による転位の観察についての解説文を連載で書いています。この解説文は、格子欠陥の評価に興味を持つ人を対象にしています。知恵を使ってトポグラフ像を読み解く簡単な手口を紹介しています。前回のその(5)では、4H-SiCの基底面転位のコントラストのつき方からバーガース・ベクトル、基底面らせん転位、基底面Siコア刃状転位、基底面Cコア刃状転位を簡単に求めるやり方について説明しました。同様な考え方をすれば、他の結晶などの転位組織の解析が可能になるかもしれません。その(6)では貫通刃状転位と貫通らせん転位のコントラストにつて解説します。

貫通刃状転位のコントラスト

バーガース・ベクトルb=±1/3[1120]、 b=±1/3[2110]、b=±1/3[1210]の基底面転位が基底面よりとび出して、c軸方向に蛇行しながら走っている転位を貫通刃状転位と名付けています。この種の転位は4H-SiCのエピ層では大変良く観察されます。貫通刃状転位は結晶成長中にビルトインされていて、塑性変形などのプロセスとは無関係に存在し、すべり面は明確ではありません。この貫通刃状転位は特徴的なコントラストを示します。これらの貫通刃状転位のコントラストについて解説します。図6-1は基底面転位の両端に貫通刃状転位がついている転位の放射光ベルク・バレットX線トポグラフ像です。g=1128回折条件で観察されたそれぞれ6つの異なるバーガース・ベクトルのものを示しています。黒矢印はバーガース・ベクトルの向き。白矢印は逆格子ベクトルg=1128のウエハ表面に投影した向きを示しています。転位の向きξは、図6-2に示す模式図の向きに設定し固定します。6つの異なるバーガース・ベクトルは、基底面転位のコントラストより推察することができます。図6-1 (a), (b)はそれぞれ、b=1/3[1120]、b=1/3[1120]の転位で、バーガース・ベクトルは逆向きです。この2つの像を見ると貫通刃状転位部の”A”のコントラストは貫通刃状転位部の”F”のコントラストとは同一のものであることがわかります。”A”の部分では、b=1/3[1120]、ξ=[0001]の転位であり、”F”の部分ではb=1/3[1120], ξ=[0001]の転位です。転位の向きとバーガース・ベクトルの両方の向きが逆転しているので、転位の周囲の格子歪は同様なので同様なコントラストをしていることがわかります。同じく、”C”と”D”は同様なコントラストを示していることがわかります。図6-1 (c), (d)でも同じ事が観察されます。貫通刃状転位部”G”と”L”は同じコントラストを示し、”I”と”J“は同じコントラストを示しています。同様なことは図6-1 (c), (f)でも観察されます。それぞれ”M”と”R”, “O”と”P”が同様なコントラストを示しています。ξ=[0001]方向の貫通刃状転位について観察された6つの異なるバーガース・ベクトルのコントラストを模式的に示したものが図6-3です。

図6-1  g=1128で観察された基底面転位の両端に貫通刃状転位がついている転位の放射光ベルク・バレットX線トポグラフ像。(a)b=1/3[1120], (b) b=1/3[1120], (c) b=1/3[2110], (d) b=1/3[2110], (e) b=1/3[1210], (f) b=1/3[1210]の像。黒矢印はバーガース・ベクトルの向き。白矢印は逆格子ベクトルg=1128のウエハ表面に投影した向き。転位の向きξは、図6-2に示す。

図6-1  g=1128で観察された基底面転位の両端に貫通刃状転位がついている転位の放射光ベルク・バレットX線トポグラフ像。(a)b=1/3[1120], (b) b=1/3[1120], (c) b=1/3[2110], (d) b=1/3[2110], (e) b=1/3[1210], (f) b=1/3[1210]の像。黒矢印はバーガース・ベクトルの向き。白矢印は逆格子ベクトルg=1128のウエハ表面に投影した向き。転位の向きξは、図6-2に示す。

図6-2 基底面転位の両端に貫通刃状転位がついている転位の向きの模式図。転位の向きはA1→A2→B→C1→C2とする。

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