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コラム 解説

増殖・成長する積層欠陥とMOSFETの特性劣化 (11)
〜 n-ドリフト層の上部から侵入する格子欠陥、側面から侵入する格子欠陥 〜

(F) nドリフト層の側面から入ってくる格子欠陥

(F-1): トレンチMOS界面からの侵入

トレンチMOS構造での積層欠陥の成長を考察します。MOS界面は縦に存在します。縦型MOS界面で基底面転位が発生し、nドリフト層へ基底面転位が侵入する場合を想定します。こういうことが実際に発生しているかは不明ですが、トレンチ底の角の部分付近には歪みが集中することが考えられ、デバイスプロセスのやり方によっては欠陥が発生することを想定して、考察を進めます。

図11-6は一般的なトレンチMOSの断面を示します。(0001)面はウエハ表面から4度ほど、傾いています。図はこの傾きを誇張して示しています。図中の(0001)面は積層欠陥が成長した、とある(0001)面を示します。以下の図11-7で示す積層欠陥の形状は、とある(0001)面の積層欠陥を図11-6の緑色矢印方向から観察した状態を示しています。

図11-6 一般的なトレンチMOSの断面構造。 (0001)面はウエハ表面から4度ほど、傾いている事を誇張して示している。図中の(0001)面は積層欠陥が成長した、とある(0001)面を示す。下に示す図11-7 は、(0001)面上の積層欠陥を上図の緑色の矢印方向から観察した図。

アモルファスSiO2と4H-SiCとの縦型界面にどのような格子欠陥が生成するかは不明ですが、図11-1(a)で示すような、小さなショックレー型積層欠陥が縦型界面のSiC側に発生しているようなモデルで考察することは自然だと思います。部分転位の向きは図11-1(a)の設定と同じように時計まわり方向に設定します。また、ついでに、図11-1(b)で示すような貫通刃状転位を伴う短い基底面転位が縦型界面のSiC側に発生しているようなモデルでも考察することにします。この場合、基底面転位の向きはSiO2|SiC縦型界面からSiC側の向きに設定しておくことにします。つまり図11-1(b)とは基底面転位の向きは逆方向に設定しておきます。図11-1(a),(b)いずれの場合も、SiO2|SiC縦型界面からSiC側に向かって積層欠陥が成長する場合を考察します。

縦型MOS界面がほぼ[1120]方向を向いている場合に現れる積層欠陥の例を図11-7(a), (b)に示します。これらの形状は(A)で考察した形状と同様の形状の積層欠陥が観察されると考えられます。また、これは(D-1)で考察した積層欠陥の形状の成長発生点より上側、つまり[1120]側に成長している積層欠陥と同じようにも考察可能です。図11-7(a)図8-2(a’’)や、図9-4(a)と同様の形状の積層欠陥です。図11-7(b)図8-3(c)図9-5(a)と同様の形状の積層欠陥です。図11-7(a)で示す積層欠陥は、単体菱形積層欠陥の成長の結果で、図11-1(a)(b)の両方の欠陥構造のモデルから成長することができますが、図11-7(b)で示す積層欠陥は、2重菱形積層欠陥から成長します。つまり図11-1(b)の欠陥構造から成長します。図11-7(a),(b)は、例として示していて、他にもいくつかの異なる形状がありますが、それらは(A)で考察した形状から推察することができます。

ゲート構造から見て縦型MOS界面がほぼ[1120]方向を向いている場合は、これはこの連載(11)で考察した(E)の場合や、(D-1)で考察した積層欠陥の形状の成長発生点より下側、つまり[1120]側に発生している積層欠陥の形状と同じです。図11-7(c),(d)に酸化プロセス条件によっては出現するかもしれない積層欠陥の形状の例を示します。図11-7(c)で示す積層欠陥は、2重菱形積層欠陥の成長の結果で、図11-1(b)のような欠陥構造のモデルから成長します。図11-7(d)で示す積層欠陥は、単体の積層欠陥から成長します。つまり図11-1(a)または(b)の両方の欠陥モデルから成長します。図11-7(c),(d)は、例として示していて、他にもいくつかの異なる形状が現れます。それらは(D-1)で考察した積層欠陥の形状から推察可能です。

ゲート構造から見て縦型MOS界面がほぼ[1100]方向を向いている場合は、(D-1)で考察した積層欠陥の成長発生点より左側、つまり[1100]側に発生している積層欠陥の形状と同じです。図11-7(e),(f)に酸化プロセス条件によっては出現するかもしれない積層欠陥の形状の例を示します。これらは図9-4(a),(e)と同様な形状の積層欠陥です。他にもいくつかの異なる形状が出現するかもしれません。それらは(D-1)で考察した積層欠陥の形状から推察可能です。

ゲート構造から見て縦型MOS界面がほぼ[1100]方向を向いている場合は、これは(D-1)で考察した積層欠陥の形状の成長発生点より左側、つまり[1100]側に発生している積層欠陥の形状とも同じです。図11-7(g),(h)に酸化プロセス条件によっては出現するかもしれない積層欠陥の形状の例を示します。他にもいくつかの異なる形状が出現するかもしれません。それらも(D-1)で考察した積層欠陥の形状から推察可能です。

トレンチの底の面から基底面転位が発生し、積層欠陥が成長する場合は、(E-2)の場合と同じです。図11-2から図11-5 の場合と同じ形状の積層欠陥が現れると考えられます。

図11-7 トレンチMOS縦型界面に基底面転位が発生した事を想定して、基底面転位から成長する積層欠陥の形状の例。黒丸は積層欠陥の成長源の基底面転位が存在した位置。青い矢印は積層欠陥の成長していく方向。 (a),(b)ゲート構造から見て縦型MOS界面がほぼ[1120]方向を向いている場合の縦型MOS界面から成長する積層欠陥の形状の例。(c),(d)ゲート構造から見て縦型MOS界面がほぼ[1120]方向を向いている場合の縦型MOS界面から成長する積層欠陥の形状の例。(e),(f)ゲート構造から見て縦型MOS界面がほぼ[1100]方向を向いている場合の縦型MOS界面から成長する積層欠陥の形状の例。(g),(h)ゲート構造から見て縦型MOS界面がほぼ[1100]方向を向いている場合の縦型MOS界面から成長する積層欠陥の形状の例。

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