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コラム 解説

増殖・成長する積層欠陥とMOSFETの特性劣化 (10)
〜 界面転位と貫通刃状転位との交差 〜

(D-2) e: b=1/3[1210]、b=1/3[2110]の貫通刃状転位とL字状界面転位の交差

b=1/3[1210]、b=1/3[2110]の貫通刃状転位とL字状の界面転位との交差により発生する短い基底面転位から生成する積層欠陥について考察します。交差によりξ= [1120]の短い基底面転位が発生します。それらの基底面転位が[1120]方向を向いている時は、REDG効果による積層欠陥の生成はありません。これらの基底面転位を構成する2つの部分転位はCコア部分転位だからです。このことは、図5-7(c),5-8(a)からも理解されます。しかしながら、エピ層成長後の高温でのデバイスプロセスで、これらの短い基底面転位部分が応力を受けると、基底面転位は張り出して基底面転位は色々な方向を向くことが想定されます。その場合、REDG効果により積層欠陥が湧き出してきます。

図10-7 (a),(b) は四面体A’またはC’層中で、b=1/3[1210]、ξ= [1120]の短い基底面転位が高温プロセス中に何らかの応力を受けて張り出した状態を示します。十分に高い温度ではCコア部分転位も自由に動き回ることを想定して描いています。2つの異なる張り出し方の例を示します。 (a’),(b’)はそれぞれ(a),(b)の状態からREDG効果により成長した積層欠陥の形状です。(c),(d) は四面体A’またはC’層中で、b=1/3[1120]、ξ= [1120]の短い基底面転位が高温プロセスで何らかの応力を受けて張り出した状態。2つの異なる張り出し方の例を示します。この場合も(c’),(d’)はそれぞれ(c),(d)の状態から成長した積層欠陥の形状を示します。

b=1/3[1210]の基底面転位の場合、応力を受けて張り出した場合、REDG効果により図10-7(a’)または(b’)のいずれかの単体菱形積層欠陥が現れます。図10-7(a’)の単体積層欠陥β’の場合、この積層欠陥の縁の部分転位の向きと、バーガース・ベクトルを逆転させると図10-6の積層欠陥β’と同じものであることがわかります。ただし、図10-6の場合は2重菱形積層欠陥が現れますが、図10-7(a’)の場合は単体積層欠陥のみが現れます。図10-7(b’)の単体積層欠陥βは図10-6の積層欠陥βと同じものです。

b=1/3[2110]の基底面転位の場合も応力を受けて張り出した場合、REDG効果により図10-7(c’)または(d’)のいずれかの単体菱形積層欠陥が現れます。図10-7(c’)の単体積層欠陥β’も図10-6の積層欠陥β’と同じものです。図10-7(d’)の単体積層欠陥βは図10-4の積層欠陥βと同じものです。

b=1/3[1210]や、b=1/3[2110]の貫通刃状転位とL字状界面転位の交差の場合、そのままではREDG効果による積層欠陥の成長はありませんが、高温のデバイスプロセス中に何らかの応力を受けた場合は、図10-4図10-6で現れるものと同様な積層欠陥ドメインが出現しますが、しかし2重菱形積層欠陥としてではなく、単体菱形積層欠陥として現れれています。

図10-7 (a),(b) は四面体A’またはC’層中で、b=1/3[1210]、ξ= [1120]の短い基底面転位が高温プロセス中に何らかの応力を受けて張り出した状態。2つの異なる張り出し方の例を示す。(a’),(b’)はそれぞれ(a),(b)の状態からREDG効果により成長した積層欠陥の形状。(c),(d) は四面体A’またはC’層中で、b=1/3[2110]、ξ= [1120]の短い基底面転位が高温プロセス中に何らかの応力を受けて張り出した状態。2つの異なる張り出し方の例を示す。(c’),(d’)はそれぞれ(c),(d)の状態から成長した積層欠陥の形状。緑の矢印は基底面転位の張り出しによる移動を示す。

b=1/3[1120]のL字状界面転位とさまざまな貫通刃状転位との交差によって生成する基底面転位が原因となって積層欠陥が生成する場合、積層欠陥の形状がいびつな形状を示し、積層欠陥の内部は異なる変位ベクトルで区切られたドメイン構造を持つということが理解されます。

(D-2) f: 貫通らせん転位や貫通混合転位とL字状界面転位の交差

貫通らせん転位や貫通混合転位との交差については連載(7)図7-4(b)で考察しています。基底面転位ループを貫通らせん転位や貫通混合転位の周囲に残すことを想定します。結果は貫通刃状転位b=1/3[1120]の周囲に転位ループを残す場合の図10-2(a),(b),(c),(d)の場合と同様なことが発生すると考えられます。ただし、貫通らせん転位や貫通混合転位の場合、単体の菱形積層欠陥の位置から1cだけ上側、または1cだけ下側、つまり界面転位がのっているすべり面より1cだけ上側、または1cだけ下側にも菱形の積層欠陥がREDG効果により形成されることが考えられます。上側に形成されるか、下側に形成されるかは、貫通らせん転位成分のバーガース・ベクトルの符号に依存します。また、界面転位がのっているすべり面より1cだけ上側、または下側に発生する菱形の積層欠陥の形状は連載(9)の図9-4(c)の場合と同じものと考えられます。

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