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コラム 解説

「キロワット」と「キロワット時」 (3)
〜 設備利用率で考える 〜

地球温暖化についての意識の高まりや、東日本大震災に伴う原子力発電所での事故、電力市場の自由化、などに伴い日本の電力ネットワークに大きな変化が生じています。さらに、ウクライナ情勢に起因するエネルギーの自給率問題や、電力供給体制の不備、電力料金高騰等が、マスコミなどでも大きく取り上げられ、電力ネットワークのあり方などが一般の人々の間でも大きな関心事になっています。

しかしながら、マスコミが電力事情を報道したり説明したりする際に、キロワットとキロワット時の混同、つまり[kW]と[kWh]の単位が混同されていることをこの連載のその(1)で示しました。また、これらのキロワットとキロワット時で示されるものがどういう意味を持っているかを、この連載のその(2)で説明しました。 [kW]は、「電力」または「出力」の単位であり、その値はある瞬時の「電力」の値です。 [kWh]はエネルギーの単位で、「電力量」という言葉で表現されています。この連載その(3)では、電力ネットワーク上での各発電施設の特徴を、電力と電力量の違いの観点から整理したいと思います。その際に設備利用率と呼ばれるパラメターを新たに導入します。

ある発電所が時刻t1からt2まで発電した電力量[kWh]は、

で示されます。但し、P(t)は時刻tの電力[kW]です。

いきなり積分記号が出てきて引いてしまう人もいるかもしれませんが、時刻t1からt2までの間に発電した電力をすべて足し合わせたものと考えてください。t1からt2まで、を正月の午前0時から大晦日の午後12時まで設定すると年間に発電した電力量を示すことができます。

(1)式の関係を 原子力発電所の場合の例にとって図示すると、図 3-1のようになります。縦軸が電力[kW]、横軸が年間の時間経過です。1年間に発電した電力量は、図の水色の面積で表されます。日本の原子力発電所では、縦軸の「電力」は、一定の出力で運転されます。つまりP(t)は一定値です。図 3-1では例として11月、12月に定期的な設備点検の実施を想定し、運転を停止している状態を示しています。

図3-1 原子力発電所の1年間の運転状態の例。縦軸は電力つまり原子力発電所の出力[kW]。横軸は時間。電力量は原子力発電所が生産した電力エネルギーの総量。つまり水色の領域の面積。

ここで発電所の実力を評価するひとつの尺度である「設備利用率」を定義しましょう。

設備利用率

=年間の発電電力量[kWh] / (定格電力[kW] x年間時間 (365 x 24 h) )    (2)

ここで定格電力とはその発電施設の設計値です。

図 3-1の運転状態から、ある原子力発電所の年間の発電電力量が分かりますから、(2)式を使って、設備利用率を求めることができます。日本の原子力発電所の場合2011年以前、設備利用率は実績として0.8程度でしたこの設備利用率は人為的に動かすことも可能です。欧米などでは運転中に出力を変えることを普通に行っていますが、日本ではこの出力変動が設備に及ぼすストレスなどを懸念して、運転中に出力を変えることは行っていません。

次に太陽光発電の場合を考えてみましょう。図 3-2は、2日間の太陽光発電施設の発電の状態を例に模式図として示しています。

図3-2 太陽光発電の場合の電力[kW]と電力量[kWh]の関係。縦軸は太陽光発電施設がある瞬間に生産した電力。電力量は水色の領域の面積。

太陽光発電の場合、電力P(t)[kW]が変動します。晴天の昼間には発電電力は最大になります。曇天の昼間、発電電力は大きく変動します。また夜間は出力がありません。太陽光発電施設の運転実績より年間の発電電力量は求めることができます。 そうすると、(2)式で設備利用率が求められます。太陽光発電施設の設備利用率は、日本の天候だと0.12程度が実績です。ちなみに、ドイツでは緯度や気候などの違いにより0.09程度だそうです。

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