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コラム 解説

酸化ガリウムパワーデバイスの課題 (2)
〜 p型Ga2O3

ここからはp型の問題に話を絞る。前コラムのn型ドリフト層の電界分布の議論は、pn接合があることが前提となっている。n型ドリフト層の反対側には高濃度のp型層があり、p型層側にも空乏層が拡がる。n型半導体の正に帯電した空乏層とp型半導体の負に帯電した空乏層の両者で、逆バイアスを受け止めているのである。p型Ga2O3ができないことが、Ga2O3パワーデバイスの実現を阻むShow Stopperになってしまうのだろうか。

パワーデバイスのp型層の役割を考えよう。SBDやMOSFETのような正孔がON電流を担わないユニポーラデバイスでは高い正孔移動度はいらない。p型層はOFFの耐圧を保持する空乏層形成にだけ関われば良い。逆バイアス電圧変化に応じてスムーズに空乏層が伸び縮みすればよく、そのためには、イオン化したアクセプター(固定電荷)と正孔(可動電荷)が素子温度や逆バイアス電圧に依存せずに存在すること、つまりアクセプター準位が浅いことが求められる。耐圧面では、p型の絶縁破壊電界がn型と同程度であることが必須である。また、逆バイアス時の接合漏れ電流の発生源となるSRH過程に関わるバンドギャップ内の準位が少ないことも必要だろう。

これまで報告されているp型Ga2O3の知見を見ていく。理論計算によれば、アクセプターと見込まれる不純物の活性化エネルギーは1eV以上で、浅いアクセプター候補は見つかっていない。実際、アクセプター候補のひとつであるNをイオン注入すると深い順位にピン留めされた高抵抗層となる。この高抵抗層は電流遮蔽には有効だが、逆バイアスを受け止める空乏層としては機能しない。最近のバンド計算の精度は高いとはいえ、理論では見逃している浅い複合準位が見つかる可能性も否定はできず、今後のp型ドーパントの探索を期待したい。

探索の範囲を広げて、p型になりやすい他の酸化物とn型Ga2O3とのヘテロpn接合も検討されている。酸化銅や酸化ニッケルで良好な整流特性が報告されている。Ga2O3の大きな絶縁破壊電界を生かしたパワーデバイスが実現するかどうかは、これらのp型材料がGa2O3と同程度の絶縁破壊電界を持つかどうか、またGa2O3とのヘテロpn界面の逆方向漏れ電流が十分小さく抑えられるかが鍵となろう。

(続く)

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