世の中の技術系の教科書には、取り扱う領域を体系的に系統立てて解説していくものが多い。その際、主題に沿った多くの箇所で言及されはするが、独立した主題としては扱われにくいトピックスがしばしば見られる。当組合のコラムにおいても、そのようなトピックスを取り上げてみたいと考えていたが、今回「結晶学のトリビア」として、数多くある結晶構造の中から特に面心立方(FCC)構造と六方最密(HCP)構造を取り上げ、その違いを改めて考えてみた。
結晶の構造を原子配列の観点から検討する際、2次元の原子層が積層した構造を基本とする立場と原子を頂点とする多面体を基本とする立場がある。前者の立場で説明される結晶構造としてはFCC構造とHCP構造が代表格であるが、この2種の構造はよく似ているようで実は大きく異なる性質を持っている。本記事ではこの2種の構造について、対称性や格子構造の点から見直してみた結果を紹介する。